北海道産ライ麦を使うことで農家さんを応援しているお店をご紹介④【Boulangerie nico ブーランジェリーニコ】(神奈川県・平塚市)


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北海道産のライ麦を使ってお店がパンを焼き、そのパンを私たち消費者が購入して食べることで「環境再生型農業」「環境保全型農業」の普及にも役立つというお話を3軒のお店の紹介と共にお伝えしてきました。

「環境再生型農業」の手法の一つで、根はりがよいライ麦を育てることで畑の保水性や排水性が上がるなどの土壌改良が見込まれます。日本では緑肥として畑にすきこむライ麦品種が主流ですが、ハンコックという品種は食用なので利用価値が高く、輪作に組み込みやすいそうです。

パンめぐリストの岩田がシリーズでお伝えする第四弾は、
神奈川県平塚市にある「boulangerie nico(ブーランジェリー ニコ)」の近藤将吾シェフにお話を聞いてきました。


JR平塚駅北口から徒歩10分、国道1号線を越えて少し進んだ先にお店はあります。
バゲットの顔つきはキリッとかっこよく、パンブリエやサクリスタン、クグロフなどが並ぶラインナップはフランスの風を感じられます。

近藤シェフは「ドンク」や「ル・ルソール」の清水シェフの元で技術を学び、2014年に地元の大磯に近い平塚にお店をオープン。

北海道産ライ麦“ハンコック”を使うようになったきっかけは?

お店のパンは国産小麦100%で作っているため、ライ麦も国産でいいのがあればと思っていました。
最近“ハンコック”というライ麦の名前を目にする機会が増えて気になっていたところ、普段から小麦を使っている「アグリシステム株式会社」さんのHPで見つけて使い始めました。

今年の夏、北海道にあるアグリシステムさんの本社や契約されている農家さん達の元も訪れ、その考え方にも共感して使っています。

今までに使ったライ麦との違いは?

4~5種類のライ麦を使ってみたなかで、ハンコックは一般的なライ麦のグレーな色ではなく茶色っぽいのが見た目にもいいですし、焼いてみてクラストがねっとりではなくサックリと仕上がります。
ライ麦に含まれているペントザンという多糖類には強い吸水力があって、製パン中に離水していくからベトベトしやすいのですが、ハンコックはそれが少なくて使いやすいです。

以前使っていたドイツの全粒粉は粗挽きで香りも荒々しかったけれど、ハンコックは独特なライ麦臭もなく落ち着いているというか優しいですね。
『食べやすい』というのがポイントです。

どんな商品に北海道産ライ麦を使っている?

カンパーニュやロデヴには種として30%、チャバタや食パン(ハードトースト)には10%使っています。
ルヴァン種を1回小麦と水と合わせて6時間くらい発酵を取り、もう1回同じことを繰り返したあと、ライ麦と小麦粉と水とその発酵を取ったものを合わせて4時間くらいさらに発酵を取ります。
ここにライ麦を使っているのでルヴァン種を使っているパンはライ麦が少しずつ入っていることになります。

カンパーニュにはライ麦ハンコックを30%、残りはアグリシステムさんの小麦粉を使っています。

カンパーニュ

ハンコックを使ったパンを実食!


◆カンパーニュ
袋を開けるとしっかりと焼かれた香ばしい香り。クラストは薄めで引きも気にならず酸味も感じず食べやすいですね。
クラムはライ麦の香りをほとんど感じず、しっとりした質感。すぐに甘みが伝わってきました。

鼻から抜けるクラストの香りがほうじ茶のような芳ばしさ。他のお店のハンコックを使用したパンを食べた時にも中国茶のような発酵した香りを感じたので、このお茶のような爽やかな香りが特徴なのかもしれません。

近藤シェフが話されたように、クラムもねっとりせず多くの人が食べやすいと感じるパンだと思います。
なんにでも合うけれど、お肉料理のソースを吸わせたら美味しいだろうなと感じました。

ライ麦に限らずお店で人気のパンもご紹介


◆フォカッチャ
手にしただけで高加水でふんわりふにゅりな食感が想像できます!
外側はクラッカーのような焼きの香ばしさ、クラムは高加水で断面がつやピカ。
ふんわりむにむにとした食感で、噛んでいくと甘みが増してきて、その甘みがオリーブオイルに包まれて口の中に長くとどまってくれてとても美味しいです。


◆ゆめきらり食パン
まずは1㎝強の厚さを生食で。
クラストは焼きの香ばしさがあり、クラムからはバターのミルキーな乳製品の香り。
しっとりふんわり優しい食感で噛むごとに小麦の甘みとバターのミルキーな甘みが口いっぱいに広がります。

最初、味見のためにごく薄くスライスして口にしたのですが、クラストの引きが苦手な人も気にならないほどソフトで、クラム単体ではとろけていって、天にも昇るような気持ちになりました。
お店推奨の食べ方ではないので興味を持たれた方は試してみてください笑。

トーストするとクラストのサクサクとした歯切れの良さが際立ち美味しい!!
そこにクラムのふしゅ~とろ~っとした口どけが加わるのです。
こんな美味しい食パンで朝をスタートできたら毎日ご機嫌でいられるだろうなあ。


◆サクリスタン
食感を楽しめるので、他のお店でも見かけると私は買ってしまう一品。
折り込み生地をねじって焼いているので、軽くリベイクするとサクサクの食感が最高です。
アールグレイの柑橘を思わせる爽やかさも甘さを軽やかに感じさせてくれます。

これからどのようなお店にしていきたい?

オープンから今年で10年目。
長く続けていきたい、ただそれだけです。

当初は、自分が好きなこともありますがハード系のシンプルな、ダイレクトに小麦の味が伝わるパンを作り、お客様が「今日はこういう料理を作るからこういうパンを買おう」というようになったらもっと「パン」という分母が大きくなっていくのだろうと思っていました。

現在は食パンが一番売れることもあり、ハード系に限らなくても国産小麦を使ったパンをお客様が求めてくださり長く愛されるのであればいいのだなと思うようになりました。

コロナがあったり物価が上昇したり、スーパーのパンと比べるものではないかもしれませんがパンがケーキのように贅沢なものになりつつあると感じます。
そんな中でもお店にパンを買いに来てくださる地元の方々のために長く続けていきたいです。

「ベッカライ・ブロートハイム」の明石シェフの本に『パン屋は公民館みたいな存在が理想』というような内容が書かれていました。
この10年で、小学生だったお子さんが二十歳の成人式を迎えるなどお客様の日常を感じられたり、お店で何気ない会話を交わしたり、本に書かれていたように地域に密着した存在でありたいと思います。

パン作りへの想い、日々買いに来てくださるお客様への想いなど、話が進むにつれて言葉を多く紡いでくださった近藤シェフは、地元平塚への愛情溢れる方でした。
地元ではないですが、私も美味しいパンと自然と人が集まる雰囲気を味わいにまた訪れようと思います。

SHOP INFORMATION
【店名】Boulangerie nico ブーランジェリーニコ
【住所】神奈川県平塚市宮松町7-2落合ビル1F
【電話番号】0463-86-6900
【営業時間】9:00~19:00(パンが無くなり次第終了)
【定休日】月・火

※写真の商品の種類、価格は、2023年10月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。


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パン屋さんのご紹介

Boulangerie nico (ブーランジェリー・ニコ)
神奈川県平塚市宮松町7-2落合ビル1F
電話番
0463-86-6900
営業日
【営業時間】9:00~19:00(パンが無くなり次第終了)
【定休日】 月・火

Instagram
https://www.instagram.com/boulangerie_nico0425/

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カンパーニュ
ゆめきらり食パン

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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。