ブリオッシュやスコーン、ドーナツまでもライ麦で美味しく作り上げる【ラ・ブーランジェリー・ド・ハリマヤ】(福岡県・北九州市)


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「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズ

第10弾は福岡県北九州市にある「la boulangerie de Harimaya ラ・ブーランジェリー・ド・ハリマヤ」の大原弘資シェフにzoomで話をお聞きしました。

ハード系のパンが好きな人達から熱い支持を集めるお店で、お店のインスタグラムには茶色いパンの写真が並びます。

店頭に並ぶパンの約4割にライ麦が使われているという、都内のハード系が人気のパン店でも聞いたことのないほど高い割合です。
しかし食べてみると「硬い、酸っぱい」というイメージとは違い、「ふんわり、甘い」など今までのライ麦パンの概念を覆す食べやすいものが多いのです。

ライ麦をもっと身近に感じてほしい!

大手チェーンベーカリー、熊本県南阿蘇村にある自家製天然酵母パン「めるころ」を経て、2015年にお店をオープン。

翌年からすべての粉を国産に変更されました。
その際、名前だけは聞いたことがあった北海道の「アグリシステム株式会社」さんの粉を使うにあたりホームページをチェックしたところ、
・食卓の安心を守る取り組み
・健康な土と安全な食を未来につなぐ取り組み
など環境に配慮した企業の想いに共感されたそう。
アグリシステムさんから昨年、有機栽培の食用ライ麦品種「ハンコック」が出たことを機にライ麦はすべてハンコックに切り替え。
今まで使っていたものに比べて香りや食べ口が軽やかで、クセがないけれどライ麦の美味しさはちゃんとあるのでより多くのパンに使えると感じたそうです。

ライ麦パンを食べる人が増えればライ麦を育てる農家が増える

ライ麦は土の中に深く根を張るため、畑の保水性や排水性が上がるなどの土壌改良の効果がある

土壌が良くなれば農薬や化学肥料に頼り過ぎない『環境再生型農業』の普及にもつながる
と、大原シェフは食の未来についても真剣に考え、様々なパンにライ麦を使ってその美味しさを伝えています。

ライ麦を使用したパン達 (右奥のクグロフのみライ麦不使用)

北九州も地域的にはライ麦や全粒粉に対して敬遠しがちで、2015年のオープン当初からライ麦を使ったパンは焼いていたけれど当初はまったく売れず。
それでも作り続けていると少しずつ浸透していき、3、4年目頃から手ごたえを感じるように。

わざわざ遠方から買いに来てくださるお客様も多く、通販の方は特にライ麦商品を好んで購入してくださるそう。

ライ麦のハードルを低くするため、カンパーニュをサンドイッチにして食べ方の提案をしたり、通常ライ麦は使わないリッチなパンにもライ麦を配合したり、見た目から手に取ってもらいやすいようフルーツをリッチに使用したり、新しい形でのライ麦の使い方を常に探っていらっしゃいます。

ライ麦を使ったパンを実食


◆ブリオッシュ・ペイザンヌ
10月末に開催された農大オープンカレッジ『パンと健康』で試食した際、「これがライ麦入り?」と驚くほどのリッチさでした。
今回取り寄せてゆっくり味わうと、ブリオッシュの特徴である卵やバターのリッチな香り、その奥にライ麦「ハンコック」の爽やかさが感じられます。
ほんのり優しい甘み。
外側はソフト、内側はしっとりとしてパウンドケーキのよう。
ライ麦の余韻によりリッチなパンが軽やかな仕上がりになっています。

トーストするとライ麦の香りがより感じられ、カリッサクッと食感も軽く。
甘みがあるのでこのまま朝食やおやつにもいいですし、ハムなど塩気のあるものをのせて食べても相性がよさそう。
◆パン・ド・ハリマヤ
大きく丸く焼くこのパンは、濃い焼き色で一見すると硬そうに見えると思いますが硬くなく、口の水分によりさらりとした口どけを楽しめます。
クラムは後から軽い酸味を感じますがバターを塗るとマイルドになり、オープンサンドにしても美味しいです。

我が家に届いたのが焼いてから3日目のパンでしたが、ほどよく水分が抜けてしっとりしつつほろりと解ける。
トーストするとカリッサクサクと香ばしさが増し、クラムには甘みが出てきてとても美味しいです。
こういうパンが日々の食卓を豊かにするのだろうなと感じました。

◆いちごとホワイトチョコ(ライ麦90%)
薔薇にも似たいちごの甘く華やいだ香り。
ライ麦90%使用。今回食べた中で一番酸味も強くシェフいわく“いかつい”パンですが、甘酸っぱいいちごとクラムの軽い酸味をホワイトチョコの甘さが包み込んでくれます。
トーストすると酸味は弱まり甘みが増します。クリームチーズやバターを塗っても美味しそう。

◆スコーン(チョコ&ピスタチオ)
ライ麦50%、スペルト小麦50%使用。
大原シェフがライ麦の可能性を考えて作った意欲作!よく売れる人気商品だそうですよ。
最初にバターがしっかり香るので言われなければ普通に小麦のスコーンと思うかもしれません。
ピスタチオがどこを齧ってもごろごろ、チョコも下のほうにごろごろ。
トーストするとサクサクほろりとして、ライ麦とスペルト小麦の香ばしい香りが際立ちます。
甘さは控えめなのでジャムやバターをのせてもいいかもしれません。

ライ麦以外で人気のパンもご紹介


◆クグロフ
ミナミノカオリ全粒粉100%使用。ブリオッシュ生地をクグロフ型にいれて焼成。
バターのリッチな香り。

この断面見てください!
生地の量より具材のほうが多いのではと思わせるたっぷりのフルーツ。
特に皮付きのマンダリンオレンジがみずみずしくて果汁がしたたり落ちそう。
いちじくやアプリコットなど甘さと酸味のバランスが良く、ミナミノカオリ全粒粉ならではの力強い香ばしさがリッチなクグロフに素朴な親しみやすさをもたせているように思えます。
紅茶とあわせて香りの広がりを楽しみたいですね。

他にはキタノカオリをベースにした手ごねリュスティックで作るあんバターや、最近はライ麦を使ったブリオッシュ・ペイザンヌの生地で揚げ焼きにしたドーナツもとても人気があるそうです。
ライ麦を使ったドーナツ、とても気になります。

来年で10周年を迎えるにあたり

2025年に10周年を迎えるラ・ブーランジェリー・ド・ハリマヤさん。
お店オープン時からテーマにしているのは『地元九州の小麦でどれだけ美味しいパンができるか』。
ミナミノカオリを使ったパンやクグロフは、力強い香ばしい香りが印象的でまた食べたい!と思わされます。

九州の小麦をメインにしているけれどそれだけだとイメージに近づかないときには北海道産などを使うそう。
そのイメージに合うのがアグリシステムさんのハンコックだったりキタノカオリだったりするのですね。

大原シェフがこれからやりたいことは、
・製粉を始めたい。今までやったことがないので自分で製粉した粉でパンを作ってみたい。
・小麦畑を持ちたい。今はプランターでごく少量育てる程度だけれど大々的に作ってその小麦を使ったパンを作りたい。
・ライ麦の新しい可能性を探りたい。どこのお店でもライ麦を使ったパンが並び、皆が日常的に食べるようになればと思う。農家さん達もライ麦をたくさん作ることができ、よりよい農業の未来にもつながっていくから。
・僕にないアイデアを持ったシェフが全国にたくさんいらっしゃるので、ライ麦の多様性を伝えていきたい。ライ麦をスイーツ(クレープ)に使用してパティスリーなどでもライ麦を応援してくれるシェフの輪が広がってほしい。

どうやってライ麦を使った商品を思いつくのかお聞きすると、「特に何も考えておらず、思い付きを形にしていってるだけなんですよ」と。
固定観念に囚われず、お客様の食べやすさを考えてライ麦の可能性を追求する大原シェフ。
これからもシェフの作るパンから目が離せません。
ライ麦に抵抗を感じている方もきっと「こんなに食べやすいライ麦パンってあるんだ」と思えるはずです。

※リジェネラティブ・ベーカリーについては以下をご参照ください。

リジェネラティブ・ベーカリー ~地球を癒すパンづくり

SHOP INFORMATION
【店名】ラ・ブーランジェリー・ド・ハリマヤ
【住所】福岡県北九州市若松区高須東3-13-1
【電話番号】093-741-2525
【営業時間】10:00~18:00 ただし完売の場合は早い閉店あり
【定休日】水・木 不定休あり

※写真の商品の種類、価格は、2024年2月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。


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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。