ただただ美味しいパンを追求する【発酵所】(群馬県・太田市)


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リジェネラティブベーカリー・シリーズ

第9弾は群馬県太田市にある「発酵所」松岡秀シェフに話をお聞きしました。

2019年訪問時のお店外観

畑が広がるのどかな風景に佇むお店は、訪れる人をのんびりゆったりとした気分にしてくれます。

パン作りとは全く異なる職業に就いていたそうですが、20歳を過ぎてからその職を辞めて何をやろうかと考えた時に、まず思い浮かんだのは好きだった和食の世界。
しかし、和食は下積みが長く自分のお店を持てるようになるまでには時間がかかると思い、パンの世界へ。
地元にハード系のパン店がほとんどなかったことやバターをたっぷり使ったパンが苦手だったこともあり、練馬にある「パーラー江古田」で約1年働き、自分の作りたいパンを作ろう!と2012年にお店をオープンされました。

北海道産ライ麦“ハンコック”を使うようになったきっかけは?

昨年秋に北海道へ行き、アグリシステムの伊藤社長から「環境再生型農業」」について直接お話を聞きました。
ライ麦を育てることが土壌改良につながる、アグリさんで作っているハンコックという品種が食用で美味しいパンを作るのに向いている、というのを知り「それならぜひ使ってみたい。使うことで活動を応援することにもなるならいいなあ」と使い始めました。

以前から国産のライ麦を使っていましたがそちらは粗挽きでつながりが良くなく破れやすいため、製パン性の高いハンコックをベースに使っています。

アグリシステムさんの粉はお店を始めた10年くらい前からずっと使っています。当初はモンスティルというハード系のパンに向く粉を使っていましたが、キタノカオリ100を販売されるようになり、今はこれをメインに使っています。

どんな商品に北海道産ライ麦を使っている?

“ライ75”というライ麦75%にひまわりの種とキヌアを入れたものと、“カンパーニュ”にも35%使用しています。
ライ75には栃木県の上野長一さんのものを直接仕入れて、粗挽きの食感などほんの少しアクセントとして入れています。

ハンコックを使ったパンを実食!


◆ライ75
胡麻のように香ばしい香り。
クラストはしっかり焼いて硬め、引きはなく口どけがいい。
クラムは水分を保持してしっとり。ねっとりと口にまとわりついたかと思いきや、するりと解けていく。
ひまわりの種、キヌアのカリップチッとした食感が心地いい。
ライ麦特有の穀物臭が気にならないのはハンコックならでは。


◆カンパーニュ
しっかりと焼きこまれたクラストはお煎餅を思わせる香ばしさ。
むぎゅむぎゅとやや引きがあるもののライ75同様に口どけがいい!
クラムはしっとりむっちりとして、軽い酸味あり。全粒粉の粒々もいいアクセントに。

ライ麦に限らずお店で人気のパンをご紹介


◆ぺろんぱん
キタノカオリ100%、菜種油でシンプルに仕上げたそう。
バター不使用(乳製品・卵不使用)のクッキー生地にはココナッツを使い、その甘い香りとシャクシャクとした食感が後を引きます。

生地はむっちりむちむち。唾液と相俟って生地の小麦の甘みが口いっぱいに広がります。
全体的にほんのり優しい甘みがクセになる美味しさ。

パンを作るうえで、お店を続けるうえで大切にしていることは?

ただただ単純に『今まで以上に美味しいパンを作りたい』と思っています。
そのためには使う素材にも気を配っています。
・国産小麦100%
・できる限り野菜は地場産で(実家でも作ってもらっている)
・すべての素材を近隣では揃えられないけれど日本産の美味しいものを使う
※ドライフルーツに関しては国産オーガニックが少ないので海外産を使うことも。

僕自身の技術が足りないこともあるのでとにかく美味しい小麦を使いたいです。
「環境再生型農業」についても、パンが美味しくなるためにその活動を応援していて、“環境のために”となるとお客様には響きにくいし、パンが美味しければ自然と伝わると思っています。

作物が育つ土地の力が強くなればそこで作られるものも美味しくなる、そこに僕は共感し、美味しいパン作りのためにアグリシステムさんの粉を使っています。

毎年小麦の品質も変わっていってるなあと感じるので、己の技術や知識を増やして美味しくしていきたいですね。
「美味しい」の基準は人それぞれで皆に受け入れられるものというのは難しいかもしれないけれど、お客様に伺いながら変化させていければと思っています。

前述の“ぺろんぱん”もお客様が名付け親なんです。
メロンパンを作ってほしいとご希望があったものの、うちはバターを使わないので「メロンパンぽいもの」を作ってみました。
元々はスコーンを作っていたのでクッキー生地に伸ばしてパン生地の上にのせてみたのが始まり。
食べたお客様とSNSで感想などやりとりをしていたら「パンを持ち上げる間に生地がずれて「ぺろん」となるから「ぺろんぱん」ですね(笑)」と。

うちのお客様は車で1時間くらいかけてくる方でも地元と呼べるような場所にお店がありますし、遠方からわざわざ買いに来てくださる方も多いので、営業日はほぼ毎回SNSを発信してその日に並ぶものなどアナウンスしています。

今後の目標、やりたいことは?

自分の中の作りたいパン、理想のパンって少しずつ変わっていくと思うので、それに向かって少しずつできることをやっていきたい。
でも、誰かのやり方を取り入れるのは面白くなくて、時間がかかっても自分で「こういう風にやるのがいいのかな」と考えるのが面白いんですよね。
考えることが己の力になると思っているので。


飄々とした雰囲気で、お話を伺っている間も「僕みたいな変わったパン職人ですみません」とおっしゃる松岡シェフですが、2019年に取材させていただいた時も理想のパンを追求する想いが感じられて、その進化していくパンに人々が魅了されてイベント時には長蛇の列ができる、人気の訳がそこにあるのだろうなと感じました。

※リジェネラティブ・ベーカリーについては以下をご参照ください。
https://www.agrisystem.co.jp/regenerativerye2023.htm

SHOP INFORMATION
【店名】発酵所
【住所】群馬県太田市茂木町346-5
【営業時間】10:00~17:00位まで
【定休日】月・火・水


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発酵所
群馬県太田市茂木町346-5
営業日
【営業時間】10:00~17:00位まで
【定休日】月・火・水
Instagram
https://www.instagram.com/hakkooooo/

おすすめパン

ライ75%のぱん
カンパーニュ
ぺろんぱん

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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。