「未来を変えるパン」「3日目が美味しいパン」ってどんなパン?(後編)【東京農大オープンカレッジ】(東京都・世田谷区)


2月に参加してきた東京農大オープンカレッジの
【3日目がおいしいパン】をテーマとした講座の内容を前編・後編に分けてご紹介しています。

前編は、講座の大きなテーマ【未来を変えるパンとは?
3日目のパンがおいしくなる理由とは?
等についてでした。

後編は、ゲストスピーカーの早川ゆかりさんに、3日目が美味しいパン(ハード系パン)の保存方法や美味しい食べ方についてお話いただいた内容をメインにお伝えします。

早川さんは、山梨県のドイツパン専門店「ヴァルト」で働きながら
パンと人、パンと地域を結ぶ“ブロートコネクター”として活動をされています。
ヨーロッパに行って現地のパンの食べ方を学んでこられ、「ヴァルト」のInstagramで美味しい食べ方を発信中。
https://www.instagram.com/wald.2161/

缶詰を使った美味しいアレンジ

ハード系のパンは酸味があったり、硬い、パサつくなど苦手との声を聞きます。
試食パンもそのまま食べるより、何かを載せたりスープに浸したりしてより美味しく食べてもらいたい、好きになってほしいと早川さんはおっしゃいます。

手軽に美味しくハード系パンを楽しむために、4年前の講座では鯖の味噌煮缶を使ったアレンジを試食と共に教えてくださいました。

今回はまだ会場での試食が難しいため、受講者全員にパンに合う魚の缶詰として株式会社「宝幸」の「日本のいわし アヒージョ」が配られたので、早川さんに教えていただいたレシピを元にオープンサンドを自宅で作ってみました。

この缶詰はいわしの他ににんにくとオリーブオイル、塩と香辛料を加えてあるのでそのままパンにのせるだけ、缶詰の汁をパンに吸わせるだけでも美味しいです(オイル類は温めるとパンにすーっと浸透しやすくなるそう)。

薄切りのライ麦パンに薄くクリームチーズを塗り、いわしアヒージョを適量のせます。
刻んだ青ネギだけでも美味しいのですが、もう少しアクセントが欲しかったのでクミンシードを少量のせたらこれが大正解!
家にあるもので手軽にハード系のパンを美味しく食べられました。

パン食文化研究室では、ハード系のパンとパンに合う缶詰の組合せを以前から研究されています。
せっかくパンが長持ちしても、惣菜パンに調理されてしまうと賞味期限が短くなり、食品ロス率が高くなると考えているからです。

普段から自宅に缶詰を常備していますが、「宝幸」さんから以下のような缶詰の利点を聞き、ローリングストックとしてもう少し増やそうと思います。
◎缶詰の賞味期限は一般的に製造日から3年間。
◎常温保存可能なので災害時の備蓄にもなる。
◎栄養素が豊富(青魚の缶詰)
不飽和脂肪酸のEPA・DHA、たんぱく質が手軽に摂れる。
骨ごと食べられるよう加工してあるので不足しがちなカルシウムが摂れる。

講座では試食パン3種類の他に「麻布十番モンタボー」の鈴木清司シェフがお楽しみパンとして、ライ麦を3割使用したバンズを焼いてくださり皆で味見しました。

「麻布十番モンタボー」は国内65店舗を展開するチェーンベーカリーでありながら、国立店、鵠沼海岸店は“国産小麦100%”使用のパンを並べるチャレンジ店です。
お店で鯖サンドが人気になり、ご自宅で作れたらいいのでは?と、ライ麦パンと鯖缶を並べて置いてみたら売れ行き好調だったそうです。

モンタボーのライ麦バンズは酸味控えめ(サワー種不使用)で食べやすく歯切れもいいです。
このようにドイツパン専門店ではないパン店でライ麦パンを作り始めているそうで、私もライ麦配合のパンを店頭で見かけることが増えたなあと感じています。
ライ麦パンにはクリームチーズなど酸味のあるものを合わせたり、ハーブやスパイスを効かせた豆のスープがよく合うそうなので、自宅でも試してみようと思います。

2023年度の農大セミナーではライ麦に着目

2023年度のパン食文化研究室による東京農大オープンカレッジ講座では「ライ麦」に焦点を当てていきます。
“腸は第二の脳”とコロナ禍免疫力を高めるためにも腸内環境を整える大事さを耳にしましたが、ライ麦は水溶性食物繊維が豊富なのでとても有効な食べ物です。

パン食文化研究室は、毎日の食事から自分や未来の子供たちの健康を考えよう、と輸入小麦ではなく国産小麦を使ったパンを推奨しています。

セミナー参加者の方から
「ライ麦や全粒粉入りのパンを選びたいけれどどうすれば見分けられますか?」と質問がありました。
スーパーやコンビニなどで売っている袋入りのパンは原材料表示がされているので確認できます。
街のパン店で表示がない場合はお店の方に聞いてみるのが一番ですが、大まかですがパンの色で見分けることもできます。
◎白ければ、精製され胚芽や胚乳が取り除かれたもの
◎茶色ければ、全粒粉やライ麦が配合されているもの
わかりやすいので参考になさってみてください。私もお店でチェックしてみます。

次回の講座は、
6/18(日)ご当地小麦パンと地域食材のマリアージュ
7/23(日)ドイツの火を使わない夕食 カルトエッセンに学ぶ
を予定しており4月3日(月)から申込がスタートします。
興味があってもハード系のパンを食べたことが今までになかった方、美味しい食べ方を知りたい方など、パンについて様々な切り口で取り上げ深く知ることができる大人の学びとしても楽しい場なので、ぜひ参加してみてください。
参考までに講座申込ページとパン食文化研究室のURLを貼っておきます。

東京農大オープンカレッジ(6/18(日)講座)申込ページ
https://noudaisup.sa-advance.com/lectures/view/3700
東京農大オープンカレッジ(7/23(日)講座)申込ページ
https://noudaisup.sa-advance.com/lectures/view/3704
パン食文化研究室のHP
https://miraipan.jp/introduction

ハード系パンの保存方法など取り扱い方

受講者の方からも質問が多かった、購入したパンの保存方法。
食パンなどのやわらかいパンではなく、ハード系パンの保存方法について早川さん(写真左)にお聞きしました。

◎なるべく大きい塊のまま保存。切った断面から香りや水分が逃げだしてしまうので。

◎ヨーロッパでは塊のまま布でくるんで保存し、1週間近く経ち乾燥が進んだらスープに入れたり様々な料理にアレンジすることを楽しむ。

◎冬場など涼しい時期は玄関や日の当たらない部屋などで保存可能ですが、夏場は冷蔵庫での保存がお勧め。

◎数日で食べきれない場合は小分けにして冷凍庫で保存。自分がどう食べたいか考えて(薄切りでサンドイッチにしたい、厚めに切ってオープンサンドにしたいなど)カットするとよい。

◎老化が進んだら水分を与えてから温め直すと美味しさが戻る。

◎ドイツパンなどハード系は、粉/塩/酵母だけで作るからバターやチーズなどの油脂やソースと共に食べるなど工夫して美味しく食べてほしい。

※一番ダメなのはビニール袋に入れたまま温度変化が激しい場所に置くこと!袋の中に結露ができる状態はよくない。

今回の講座では落ち着いてきたとはいえコロナ禍であるため、試食パンは持ち帰って食べても会場で食べてもOKでした。
2023年度の講座からは、コロナ前のようにアレンジした“お楽しみプレート”(上記写真は一例)の試食もできればとのことなので今から楽しみです。

講座内で配られた試食パンは、写真左下から反時計回りに
◎茨城県「パン・アトリエクレッセント」バゲット
◎神奈川県「ムールア・ラムール」
◎山梨県「ヴァルト」
のもの。

最後に、各店のご紹介と試食したパンについて簡単にですが記します。

「パン・アトリエクレッセント」
福島俊史シェフが茨城県産小麦「ゆめかおり」を中心に国産小麦を使ってパンを焼き続けているお店。

今回のバゲットに使用したのは
●ゆめかおり(阿部農園生産・製粉)
※石臼挽きの茶色っぽい粉30%、ロール挽きの白い粉40%
●さとのそら
※ロール挽きの白い粉30%

バゲットは普通「焼きたて」が一番美味しいと言われますが、クレッセントさんは全粒粉を配合しているので3日目でも美味しく食べられる、と自信を持ってカンパーニュではなくバゲットにしてみたそう。

「ムールア・ラムール」
神奈川県産の小麦でパンを作ろうと動き出した先駆者的なお店。
自社製粉プラント「ミルパワージャパン」で湘南地区で栽培された小麦(農林61号、南部小麦、ゆめかおり)を石臼挽きで製粉&ブレンドした“湘南小麦”をすべてのパンに配合。
創麦師として製粉から製パンまで行う本杉正和シェフのお店です。

今回のパンに使用したのは
●湘南小麦50%
●北海道産キタノカオリゆめちからブレンド40%
●ライ麦10%

小麦は熱に弱いのでゆっくり時間をかけて石臼で挽くことで、ロールという機械挽きで高温で大量に製粉するものに比べると、風味が良く栄養素も残すことができるのです。
試食用のパンの中で直径が一番大きく焼いてあり、水分も三つの中で一番保たれています。ライ麦の香りを感じます。

「ヴァルト」
自家製サワー種やライ麦を使い、本格的ドイツパンを焼き続けている渡辺知彦シェフのお店。
国産小麦で美味しいブロート(ドイツでは500g以上ある大きく焼いたパンのこと)を作りたい、と身土不二の考えを元に地元や国産の農産物をたっぷり使用。

今回のパンに使用したのは
●山梨県産無農薬ゆめかおり小麦全粒粉88%
●自家製サワー種12%
砂糖も油脂も不使用、石臼挽き製粉、ほぼ100%全粒粉

ほぼ100%全粒粉というだけあって小麦の力強い香りが一番感じられました。

2023年度の講座もパン食文化を学びながら、美味しく楽しみたいです。

 


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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。

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