北海道産ライ麦を使うことで農家さんを応援しているお店をご紹介③【イイダベーカリー】(東京都・八王子市)


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北海道産のライ麦を使ってお店がパンを焼き、そのパンを私たち消費者が購入して食べることで「環境再生型農業」「環境保全型農業」の普及にも役立つというお話を2軒のお店の紹介と共にお伝えしてきました。

「環境再生型農業」の手法の一つで、根はりがよいライ麦を育てることで畑の保水性や排水性が上がるなどの土壌改良が見込まれます。日本では緑肥として畑にすきこむライ麦品種が主流ですが、ハンコックという品種は食用なので利用価値が高く、輪作に組み込みやすいそうです。

パンめぐリストの岩田がシリーズでお伝えする第三弾は、
八王子市・南大沢にある「イイダベーカリー」の飯田光広シェフにお話を聞いてきました。

大学を卒業後、興味のあったパン作りをスタートし、パン作りをもっと学びたいと半年間ドイツへ研修に行かれたそう。
事前にドイツ語学校にも通ったのに言葉が通じない!なんでかと思ったら、研修先はケルンで方言があるらしく、結局身振り手振りで習ってきたけれど楽しかったです(笑)と苦労を笑い話にして話してくださる明るく素敵なシェフです。

その後は大手製パン会社、「ル・パン・コテディアン」、「Mallorca マヨルカ」などを経て、八王子市みなみ野にある「ブーランジェリー・パリール」で研鑽を積まれ、
2019年12月、シェフのご実家のある八王子市・由木地区の野猿街道沿いにお店をオープンされました。

北海道産ライ麦“ハンコック”を使うようになったきっかけは?

北九州市にある「ラ ブーランジェリー ド ハリマヤ」さんの投稿でこのライ麦の存在を知り、「使ってみたい!」とサンプルを取り寄せて使い始めました。

今までに使ったライ麦との違いは?

これまでは国内製粉の粗挽きのものとライ麦粉を併用していました。それらに比べるとやさしい感じがして食べやすいです。
また、ライ麦は灰色のイメージだったのが、これは茶色みがかっているところがライ麦っぽくなく美味しそうな色合いですし、扱いやすいです。

どんな商品に北海道産ライ麦を使っている?

「ルブロ」というデンマークのライ麦パンです。
ライ麦全粒粉100%に、ヒマワリの種、カボチャの種、亜麻仁、ライフレークを使用しています。種もライサワーのみです。
デンマークでは、オープンサンドにして食べたりします。

お店の夏休み明けくらいから店頭に並べるようになりましたが、お客さんの反応はとてもよく、台数はそれほど作っていませんが完売する商品です。
「薄めにスライスして召し上がってみてください」とお伝えしますが、この辺りのお客様はハード系のパンを食べ慣れている方も多いので、好みの食べ方を見つけてくださっていると思います。

他にライ麦を使ったパンは?

定番ですと「カンパーニュ」に3種のライ麦(うち、ハンコック5%使用)、石臼挽きの全粒粉、ルヴァン種、湯種液を使ってオーバーナイトで生地を作っています。
不定期ですがプンパニッケルやライ麦70%のパンを作ったり、ハンコック8割で作ったパンも酸味はありますが美味しいと人気がありました。
涼しくなってきてからはライサワーの風味も落ち着いてきているので、ライ麦が苦手と思っている方も食べやすく感じていただけると思います。

以前は気泡大きめでボリュームを出して焼いていましたが老化が早いので、最近は翌日以降の食感や風味の低下を抑えるためにライ麦を少しずつ増やしているところです。

カンパーニュ

ハンコックを使ったパンを実食!


◆ルブロ
手に持つとずっしり重い!ライ麦とヒマワリの種など種子系は半々くらいの分量だそう。今は種子の値段も上がっているので贅沢ですね。
カリカリコリコリとした粒の食感と音が心地いい。種子からの油脂がコクとなるからか酸味は気になりません。

クセのあるライ麦の香りに慣れているせいで、一瞬ライ麦と気づかないほどやさしいハンコックの香りです。
トーストして無塩バターを塗ってみたのですが種子の油分がしっかりとあるので、個人的にはクリームチーズを塗って蜂蜜をたらして食べたりするのも美味しそうだなと思いました。

クセがなく食べやすいですし、ライ麦にこれだけ種子類が入っていたら栄養価も高く、少量でも満足感があります。


◆カンパーニュ
爽やかで香ばしさも感じるクラストの香り、食感もソフトで食べやすいです。クラムは食べ進めると旨味を感じます。
翌日でも水分がありむっちり。ふしゅっと溶けていく感じも。全粒粉の粒々がいいですね。。

トーストするとポップコーンのような香ばしさが出てまた違った美味しさに出会えます。
こちらもクセがないのでお料理に添えてもサンドイッチにしても美味しそうです。

お店で人気のパンもご紹介


◆ブレーグルあんぱん
ブレーグルとは造語で、ベーグルの生地を焼く前にプレッツェルの液に漬けてから焼いているものだそう。珍しいですよね。

プレッツェルの硬さがあるのかと思ったら、もっちりしっとり。
ラウゲン液の香りが黒糖のように感じられて香りだけですでに美味しい。
たっぷり入った粒あんと表面を覆ったけしの実の相性もばっちり。人気があるのも納得な美味しさです。

◆バブカ
ふんわりしたチョコレート生地にチョコレートクリームとチョコチップが折り込まれています。
チョコ好きさんなら一度は試してほしいチョコまみれになれるパンです。

他にも「カンパーニュノア」はクルミを漬けた液も生地に混ぜ込んでいるので生地が赤みを帯びて風味もよくなっているそう。
「バゲット2023」は、その時によって配合を結構変えるのでこのネーミングになったそうで、現在は3種類の様々な特徴のある小麦粉をブレンドして使用。

以前は1カ月など期間を決めて商品を展開していたそうですが、材料が使いきれずに無駄が生じるため、今は材料が切れたら新しいものを作るようにしたので、2週間くらいで商品が入れ替わるのだそう。
なので、一期一会の出会いを求めていらしていただけたら嬉しいです、と飯田シェフはおっしゃっていました。

これからどのようなお店にしていきたい?

お店から10分ほどの場所にある実家の畑の一角で小麦も作っています。まだ10㎏程度なので店頭に並んだパンは少しだけでしたが。
また、修業先でも使っていたので石臼も入手し、自分好みの粗さに挽いたりしています。

自分が育ってきた場所なので同級生や親の知り合いも来てくれて本当にありがたいです。
この辺りは畑で果物や野菜を栽培している方も多く、そういった素材を使って近隣の方との繋がりを感じられるパンを作っていきたいです。

また、ルブロのようにライ麦や種子を多く使うパンを作り、食べるようになって、便秘気味だったのが改善しました。
今まではあまり意識してこなかったけれど、美味しいのはもちろん『健康』という面も考えて、食物繊維豊富で腸内環境の改善が望めたり、ビタミン&ミネラルも豊富なライ麦をもっと使って手軽に食べられるパンを作ってみたいですね。


オープン当初は営業時間内にも焼きあがるようにしていたそうですが、現在は開店前にすべての商品を焼き上げて奥様と二人で接客をするようになったそう。

お客様と会話をするのが大好きとおっしゃる飯田シェフ。
その温かいお人柄に惹かれて、私のパン友さんも2時間かかるけれどよく訪れているそうです。私も一度でその魅力を感じることができました。
皆さんもシェフと奥様との会話を楽しみながらパンを選んで、美味しく健康なパンライフを送ってくださいね。

SHOP INFORMATION
【店名】イイダベーカリー
【住所】東京都八王子市下柚木2丁目7-6-103
【電話番号】
042-689-5851

【営業時間】10:00-15:00(売り切れ次第閉店)
【定休日】月.火.水

※写真の商品の種類、価格は、2023年10月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。


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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。