ハード系パンマニアも唸るほどの美味しさ【ブーランジェリー パン・ルージュ】(福島県・いわき市)


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「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズvol.13

福島県いわき市にある「ブーランジェリー パン・ルージュ」の髙橋直也シェフに電話で話をお聞きしました。

花々に彩られ、大きなガラス窓が印象的なお店の外観。
窓から差し込む光で店内も明るい雰囲気なのでしょうね。

店内のパンはこのような品揃えだそう。
ハード系がメインと伺っていましたが惣菜系やお菓子系など、様々な表情のパン達を見てお店に行きたい気持ちが強くなります!

体にいいものを提供できるようこだわりの素材選び

すべてのパンを国産小麦と自家製酵母のみで作られています。

ポストハーベスト(収穫後の穀物や果物類に農薬を散布し輸送時のカビや腐敗を防ぐもの)などの心配から、国産(北海道産)のライ麦を以前から使用されていましたが、問屋さんから“ハンコック”という北海道産の食用ライ麦を紹介され使ってみることに。

・“ハンコック”を作っているアグリシステムさんはポストハーベストの問題を提起したり、土づくりから有機農法を進められ、食べる人の健康を考えている会社で信頼をしているので以前から数種類の小麦粉も使用。

・酵母に使うドライフルーツなどもオーガニックのものを使用。

・5種類の自家製酵母をパンに合わせて大体2~3種類をブレンドして使用。

「ハンコックを使ってみて感じたのは、きめの細かさ、生地へのなじみやすさ、焼いた後の香りがしっかり残るところですね」と髙橋シェフ。

ハンコックを使ったパンを実食


◆カンパーニュ(写真左)
ライ麦20%配合。
ワインを彷彿とさせる熟成の香り。
クラストは硬すぎず、ライ麦の香りが鼻腔を抜けていきます。
クラムはむっちり高加水なのに、さらりとほどけるくちどけの良さに驚き!
酸味があるので好みはでるかもしれませんがとても美味しい。

トーストするとハンコックの香りがより感じられます。

髙橋シェフにこのくちどけの良さに感動した旨をお伝えすると、
「ハンコックによるものかは定かではないですが、生地を作った時には結構べたつきがあるけれど寝かせている間にまとまってきます。均一になじんでくる感じですね。
前に使っていたライ麦とは明らかに違いがあり、くちどけもよくなりました」と。

◆パンオフィグ(写真右)
カンパーニュの生地に具材を巻き込んでいるそう。
ハーフなのにずっしり重い!
断面を見ると具材がおしくらまんじゅうしているみたいにみっちり。
一口目から飛び込んできたクルミがまったくえぐみがなくコクの塊!
丁寧な下処理が施されているのだろうなとお聞きすると、クルミをローストする際の温度やえぐみがでないよう殻の処理にも気を付けていらっしゃるそうです。
イチジクもしっとりやわらかい。

生地は酸味があるけれど具材がたっぷりで気にならず。
クルミのコクとイチジクの甘み、クリームチーズが全体をまとめあげて一切れでも満足度が高いです!

お店で人気のパンもご紹介


◆クロワッサン
お店で1、2を争う人気の品。
2種類の自家製酵母をブレンドして使用し、下発酵を取ったり様々な製法を加えながら3日間かけて作っているそう!!

袋を開けると一瞬チーズ?と思えるほど発酵バターの香りがはっきりと感じられます。
端っこはカリッ、サクサク。層が細かく剥がれ落ちる。
内層はほんのり甘く、口の中にバターの余韻が長~く続くリッチなタイプ。
なのに食感は軽やかで忘れられない美味しさ。
◆フルーツ
写真からでも伝わるでしょうか、このクラムの艶やフルーツのみずみずしさが。
手に持つとハードそうな見た目と違いふにゅりと軟らかい。
クラストもソフトで、クラムはむっちりとしてふしゅっと空気が抜けるような食感。
ぺたぺたひんやりと水分を多く感じます。

お店で一番高加水の商品で100%を超えているそう。
しっかり高温で焼きつつ、中にはしっとりさを閉じ込め、周りはパリッとするように。
いわき市ではロデブを作っているお店が少ないので、ぜひクラストとクラムの食感の違いを楽しんでほしい、と髙橋シェフ。

とてもみずみずしくて、パンなのにとぅるんとのど越しがよく、まるで「飲めるパン」!
オレンジピールのスキッとした爽快感にクルミのコク、フルーツの甘み。
それぞれしっかりと存在感があるのに一体化していてとても美味しい。

※表現者として「美味しい」を何度も書くのはよろしくないのですが、書かずにはいられないほど美味しいということをご理解くださいませ(笑)。

◆ゆずパン
袋を開けたら柚子!!。
山盛りの柚子を手に抱えているかのような芳香に、アロマテラピーのように気持ちが癒されます。
甘いのかと思いきや、ぴりりと微かに胡椒のような山椒のような爽やかな辛みが感じられます。
柚子ピールの他にカシューナッツやクルミも使用。

暑い夏の日に、同じように柑橘を感じるビールや、きりっと冷えた白ワインと一緒に食べても合うでしょうね。

お店を続けるうえで大切にされていること

「ブーランジェリー パン・ルージュ」さんは2016年4月、福島県いわき市にオープン。
髙橋シェフのお母様がパンがお好きで、朝は毎日パン食だったそう。
「今日はバゲットの日、今日は食パンの日」とテーマがあったり、夕食もシチューやパスタに合わせてバゲットが並ぶ食卓だったことなどから、常にパンを身近に感じていたことがパン屋を始めるきっかけになられたそうです。

千葉県と茨城県のパン屋で数年ずつ働きながらパンの基本的な技術を習得。
より深く知ろうと、本やネットで情報を収集したり他のパン屋などを巡るうちに、硬いパンや自家製酵母のパンが好きなことに気づいたそう。
空いている時間にお店で酵母を起こさせてもらったりして、ハード系のパンについては独学で。

「ハード系のパンはよく噛むことで健康にも良く素材そのものの味を楽しめるので、自分の店を開くならハード系のパンをメインにしたい!」と現在のお店をオープンされました。

都内ではハード系メインのパン屋も需要がありますが、いわき市では厳しいのでは?とお聞きすると、
「いわき市にはバゲットを置いているお店はあってもハード系メインのお店はないので、ここに来ればいわき市でもハード系のパンが手に入る、と自分たちの住む街で満足してもらえるような品揃えをテーマにしました」と。
実際にパン・ルージュさんのパンを食べてみて「いわき市の人が羨ましい!」と思えるほど素晴らしいパン達でした。

また、酸味がしっかりあるパンを作られているのも酸味を苦手な人が多い現在では珍しいですよね?とお聞きすると、
「確かに好き嫌いは分かれると思いますが、うちに来てくださるお客様はしっかりと酸味のあるドイツ風のパンを好まれる方が結構いらっしゃるので、ルヴァン種のみで発酵の本格的な酸味を出して楽しんでもらえるようにしています。
また、乳酸菌の影響で日持ちも良くなりますし、大きく焼くことで2日目3日目とゆっくり長く味の変化を味わいながら楽しんでもらいたいです。
『他のお店では買えない商品を作る』ということもお店のテーマにしているので、酸味がお好きな方にも満足していただけると思います」とおっしゃっていました。

お店の開店当初から一番に考えているのは『商品の質』。
・ハード系でフルーツをたっぷり使うパンの場合、オーガニックの材料を使うのでどうしても価格が上がってしまうけれど、その価格に見合った味、お客様に満足していただける味を安定して出せるように。
・自然酵母なので毎日ブレがあるけれど、管理をしっかりとし合格点を出せるパンをお客様に提供できるように。

今後も多店舗展開はせず自分の目でしっかり見て管理ができる範囲で、お客様に満足していただけるよう商品の質を変えずに、細く長くお店を続けていきたいです、と穏やかな口調で話してくださいました。

私が今回食べたパンはどれも感動するほど美味しくて、お店のインスタグラムでアナウンスされる通販募集をまめにチェックしよう!と心に決めました。

※リジェネラティブ・ベーカリーについては以下をご参照ください。
https://www.agrisystem.co.jp/regenerativerye2023.html

SHOP INFORMATION
【店名】ブーランジェリー パン・ルージュ
【住所】福島県いわき市金山町南台30
【電話番号】0246-38-8336
【営業時間】10:00~なくなり次第閉店
【定休日】日・月・火

※写真の商品の種類、価格は、2024年5月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。

 


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パン屋さんのご紹介

ブーランジェリー パン・ルージュ
福島県いわき市金山町南台30
電話番
0246-38-8336
営業日
【営業時間】10:00~なくなり次第閉店
【定休日】日・月・火
Instagram
https://www.instagram.com/pan.rouge/?hl=ja

おすすめパン

カンパーニュ
フルーツ
クロワッサン

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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。