ぷるんもっちん高加水な生地と身体に優しい素材を使ったパンが最高に美味しい【メゾンクロス】（東京都・世田谷区）

2023年02月11日岩田聡子

2021年4月、“身体に優しい食と空間”をコンセプトに掲げたパン屋【MAISON KUROSU（メゾンクロス）】さんがオープンしました。
場所は、東京都世田谷区。
東急田園都市線「用賀」駅改札から徒歩4分。

北口の円形階段を上がり、左手に「世田谷ビジネススクエア GMOインターネットTOWER」のある道をまっすぐ進むと道路左側、白い壁に木製の扉の瀟洒な佇まいのお店が現れます。

植物の緑が空気まで爽やかにしてくれているよう。

店名のプレートもライトもアレンジメントも素敵。

オーナーシェフの黒須貴仁氏は、ご出身の栃木県で行列の絶えない人気店「ペニーレイン」やハイレベルなセンス溢れる「ラトリエドゥジョエル・ロブション」で研鑽を積まれました。

ご自身も2児の父親であることから、次世代の子どもたちにも安心して食べてもらえるよう素材へのこだわりが店内に明記されています。

●無農薬、減農薬の国産小麦を100％使用。
●繊維質やミネラルが豊富に含まれるふすま（小麦の外皮部と胚芽）は栃木県産の無農薬。
●野菜は主に有機、無農薬。
隣駅の桜新町にある「AGRIKO FARM（アグリコファーム）」の葉物野菜ルッコラを「サーモンとルッコラのタルティーヌ」に使用しています。
こちらは俳優の小林涼子さんが手がけているSDGs17項目フルコンプリートの循環型屋上ファームで、『アクアポニックス』という魚の養殖×水耕栽培のシステムを併せ持つ栽培方法だそう。
●塩、砂糖、油も身体に優しいものをセレクト。

あらかじめ買うものを決めていたのにどのパンも美味しそうな顔つきで悩みます。

フォカッチャの種類が多いということは人気商品だろうし、わかりやすく“亜麻仁油”のタグがついている商品もおすすめなのですよね。

こちらがお店一番人気の食パン「雲」。

店内左手の冷蔵ケースにはサンドイッチが並びます。
散々悩んでお店の方におすすめしていただいたフルーツサンドも含め７種類を購入。

以下、実食した感想になります。

◆バゲットサンド（プロシュートとブリドモー）
バゲットは濃い焼き色で香ばしく、齧るとクラストはガリリボリボリの硬め、顎酷使系。
クラムは触れるとぴとっと吸い付くほど水分が多くもっちもち。
噛み締めると口の中に小麦の甘みが広がってずっと食べていたくなる美味しさ。

AOPチーズがとろとろで口の中でクリームのように変化。
生ハムの塩気、粗挽き黒胡椒、緑色のケッパーのようなものが効いて大人向け。
白ワインが飲みたくなります。

◆いちごのフルーツサンド
一番人気の食パン「雲」にマスカルポーネを混ぜた生クリームを後ろまでたっぷりと。
大粒のいちごは香り高くとても甘い！
パンがしっとりぷるんとしているのは、湯種の量を通常より多く使用しているからだそう。
クリームが感動的に軽やかなのでこのボリュームでもぺろりと食べられます。
年齢を重ねてクリームを重く感じるようになりフルーツサンドはそんなに買わない私ですが、これは絶対また買います！
※2月14日のバレンタインデーまでは通常のクリームをチョコクリームにしたものも登場しているので、そちらもぜひお試しを。

◆コンプレレザン（量り売りでスライス1枚からお願いできます）
水を一切使わず葡萄果汁100％で作った生地にドライフルーツ、ナッツがゴロゴロ。
生地より具材のほうが多いのでは？
ほんのり薄紫色に染まった生地からは甘いグレープの香りがしてきます。
いちじく、サヤキレーズン、ホワイトレーズン、マカダミアナッツ、カシューナッツ、ピスタチオを使用。

クラストはたっぷりの具材が溢れ出さないよう大切に包み込むかのようにしっかりと。
フルーツはしっとりソフトで食べやすく、ふすま全粒粉入りの生地はややねっとりとして。
ふすまを使った生地（ふすま特有のくせは感じません）だからたっぷりのフルーツの甘さを受け止めて飽きずに食べ進められるのでしょうね。

220℃で1分トーストすると、ナッツの香ばしさやコクが増しフルーツも凝縮して甘くなるので、クリームチーズを塗って食べるのも美味しいです。
◆手亡白餡子（写真・右）、和三盆餡バター（写真・左）
“日本の良さを残していきたい”という想いがある黒須シェフ。
餡子にも並々ならぬこだわりを持ち、創業100年を超す京都の老舗「山梨製餡」さんのものを使用。
特に、和三盆餡はシェフと山梨製餡の社長さんが試行錯誤を繰り返し納得のいくオリジナル配合で仕上げたもの。

手亡白餡子の生地は焼き色しっかりめでサックリ、ブリオッシュのようなふわふわ食感でバターの風味があります。白いんげん豆を使った餡は普通の白餡より深みがあり、甘みがしつこくなくさらりとした口どけ。
上品な仕上がりで、仲良しのパン友さん達にも人気があります。

和三盆餡バターはミニサイズの食パン「雲」に、こだわりの和三盆粒餡と国産バターをサンド。
「雲」はフランス産発酵バターイズニーをたっぷり使用しているのでしょう、口の中にバターの香りが広がり口どけのいい生地です。
むちっむにゅむにゅとした食感は高加水のパンがが好きな人にはたまりません！
粒餡はさらりとした口どけで和三盆のすっきりとした甘さが後を引きます。
バターは無塩タイプ。

◆クロワッサン
イズニー発酵バターを使用していて鼻を近づけるといい香りがします。
外層がしっかりしていて持っても崩れにくいのは珍しい。
パリパリ、ザクッ！
バターの甘みが口いっぱいに広がり、リッチなクロワッサンが好きな私は自宅で身悶えしながら喜びの舞（笑）。
内層はしっとりもっちりとして食べ応えがあります。断面も美しい～。
買ってから時間が経ってしまったら、軽くリベイクすると発酵バターのチーズのようなコクのある風味が増すのでおすすめです。

◆バターミルクフランス
このエレガントで端の尖ったフォルムに一目惚れ。
ソフトフランスの生地に濃厚なバターミルククリームをサンド、飾りにはピスタチオをあしらって。
小麦の香りが一番はっきり感じられたように思います。
クラストはカリッと軽やかでクラッカーのよう。クラムはしっとり。
ミルククリームは練乳っぽいミルキーさがありバター多めの濃厚さです。
時折塩気が顔を覗かせるのでシェフにお聞きすると、「青い海」という粗塩を入れているとのこと。
このお塩が濃厚なクリームを最後まで美味しく味わわせる隠し味なんですね。