福留 瞬(Candy Boy)の『美味しいパン旅』~幸せになれるパン屋さん~#8『メゾンカイザー~対談編~』
皆様こんにちは!
今回は、以前こちらでもご紹介しました、メゾンカイザーの職人さんに色々取材させて頂きましたので、そちらの様子をお届けしたいと思います。
ご協力くださったのはメゾンカイザーのスーパーバイザー、森下さんです。
歳も近くて、俗に言う”イケメンシェフ”な森下さん(笑)ですが、そのキャリアの長さから語られるパンに対する愛情は本物です。
僕も沢山知らない事を学ばせていただきました♪
それではどうぞ、ご覧ください!
福留:
Candy Boyの福留瞬です。よろしくお願いします。
森下さん:
製造スーパーバイザーの森下です。よろしくお願いします。
福留:
早速いろいろ質問させていただきます。まず、メゾンカイザーさんではクロワッサンがすごく人気ですよね!僕もクロワッサン大好きなんですが、メゾンカイザーさんのクロワッサンは大ぶりなのがすごく印象的でした。その中でも、特に拘っている部分はありますか?
森下さん:
クロワッサンに関しては、発酵バターを使用していまして、それも雪印さんの方からメゾンカイザーに特別に製造してもらっている “ファーメントバター”というものなんですけど、それはもう市場には出回ってなくて、メゾンカイザーだけのオリジナルバターを使っているんです。
福留:
雪印さんの特注で作っているんですか?
森下さん:
そうです。それが売りというか美味しさの秘訣ですね。あとは、発酵です。パンを焼く前のパンを育てる部分の時間も少し長めにとって、香りとか味わいに深みが出るような製法を使っているのが美味しさの秘訣になりますね。
福留:
発酵も長めに…!
森下さん:
はい。低温でとってるんです。
福留:
低温で!1日以上置いたりできるんですか…?
森下さん:
クロワッサンに関しては、当日発酵をとるんですけど、他のパン屋さんよりも少し低めの温度で…
福留:
低温でじっくり長時間発酵させる…
森下さん:
はい。低温といっても、常温に近いくらいの温度なんですけども。高めにとってしまうとそのバターの風味とか溶け出したりとかっていうことがあるので。
福留:
あ、なるほど…
森下さん:
なので通常よりは少し低めになってますね。
福留:
そうなんですね。僕、クロワッサンは自分で作ったことがなくて、その通常の温度とかもあまり詳しくないんですが、通常のクロワッサンは普通のパンと同じように30℃〜40℃くらいの温度で発酵させるんですか?
森下さん:
そうですね、その温度よりは若干低めで。
福留:
なるほど。ありがとうございます。2つ目の質問です。先日ミッドタウン店の方で『プリエオショコラ』を頂いたんですが、表面の砂糖がすごいザクザクな食感だったりするじゃないですか?あれすごく好きだったんですけど、『プリエオショコラ』のように、森下さんがこれまで手掛けてきたパンの中で、特に拘って作ったパンはありますか?
森下さん:
まず、イタリアのパンの『チャバタ』ってご存知ですか?
福留:
はい!
森下さん:
あのオリーブオイルのパンですね。あれも、そのミキシングっていう仕込みの段階ですね、生地を作っている時のオリーブを入れるタイミングで、最終的なその歯切れの部分に影響が出てしまうんです。例えばオリーブオイルを入れるタイミングが早かったりすると、弾力が強すぎてしまって、そのオリーブオイルの香りを直になかなか感じ取れなくなったりしてしまうんですね。入れるタイミング1つで食感も香りも変わってくるので、僕は『チャバタ』を特に拘ってますね。
福留:
オリーブオイルを入れるタイミング…すごい!そういうところだったんだ〜。
森下さん:
そうですね。(笑)
福留:
通常はバターを入れるタイミングで一緒にオリーブオイルを入れるんですかね?
森下さん:
その物によって変わってくるんですんよね。
福留:
え〜、どの段階で入れるんだろうってすごく気になっちゃいました。
森下さん:
基本的にあまり早く入れすぎてしまうと、香りの成分って混ぜることによって飛んでしまうので、できるだけ最後のほうに入れるっていうのがスタンダードな仕込みなんですけど、逆に最後のほう狙って練り過ぎちゃってもちょっとキメが詰まってしまったり。ちょっと手前だったりすると今度はボリュームが出なかったりするんですね。なのでそこの見極めっていうのがすごい難しいんです。
福留:
もう今では完璧のタイミングですか?(笑)
森下さん:
はい、今では完璧で。(笑)そこはもう経験ですね。やっぱり仕事でやってるので試作っていう部分でやっていると、それは商品としてお店に出せるのか出せないのかというレベルになってしまうので、先輩に教わりながらここのタイミングで入れるんだよっていうのを何回も何回も聞いて自分のものにしていく形ですね。
福留:
ちなみに今、森下さんはおいくつですか?
森下さん:
僕は今32ですね。
福留:
32歳…。若いですね。
森下さん:
いやいや、福留さんよりは歳上なので(笑)
福留:
すごい経験たくさん積んでらっしゃるんだろうなと感じました。
森下さん:
メゾンカイザーでずっと働いていて今12年目ですから
福留:
すごいですね、20歳の時から!
森下さん:
そうですね、専門学校を卒業してすぐメゾンカイザーに入社して、そこからずっとやっているんで。
福留:
店舗もずっとこちらですか?
森下さん:
店舗は色々ですね。2.3年前ぐらいに福留さんの事務所の近くのミッドタウンでもシェフをやってました。
福留:
そうなんですね!えー!
森下さん:
神楽坂は2年半前くらいに来てシェフをやりました。
福留:
2.3年前は僕もミッドタウンに行っていたので。
森下さん:
本当ですか!
福留:
はい、お会いしてたかもしれないですね(笑)
森下さん:
ありがとうございます(笑)
福留:
ありがとうございます。(笑)では、次の質問です。メゾンカイザーさんのInstagramで「期間限定商品」というのをよく見かけるんですが、どれも季節にぴったりで食べたくなるような商品ばかりだなと思って見ています。パンを作るときに時期によって意識してることとか注意してることは何かありますか?
森下さん:
それは色々あるんですが、まず仕込みの部分でいうと、やっぱりパンって生き物なんですね。というのも、酵母を使ってパンを育てていくので、人間と一緒で、やっぱり寒い時期だと水の温度が低過ぎちゃって縮こまっちゃうじゃないですか?なので、寒い時期は温かめのお水を使ってだいたい24℃〜25℃ぐらいの温度の時に最終的に生地が仕上がるようにという調整をするんですけど、その部分が1つと、その仕込み終わった生地を分割するタイミングで早かったり遅かったりということがないように、フィンガーテストという、生地に指を刺して適正な状態かどうか確かめて調整してるんですね。そのなかで、一番大事なのは仕込みの水の部分ですね。
福留:
そうなんですね。やっぱりまずは水の温度から注意して守っていくんですね。
森下さん:
そうですね。やっぱり最初の段階でその水の温度がずれてしまうと、仕上がりがどんどん変わっていってしまうので、練ってるときのグルテンという、パンのボリュームを出すタンパク質の成分があるんですけど、その出来方が変わってきてしまうので、この温度は一番大事にしてますね。
福留:
そうですよね。僕もパンシェルジュを取る時に、水の温度が大事だよって習いました。
森下さん:
はい。その通りですね。
福留:
でも実際に自分で作る時はそこまで細かく調整できなくて…家庭で作る時に水の温度が若干冷たいなと思ったらレンジでちょっと温めたりしたことはあるんですけど(笑)
森下さん:
(笑)
福留:
そういうところは、お店でもやっぱり拘ってるんですね。
森下さん:
そうですね。やっぱり温度計っていうのは欠かせない部分で、温度計で水の温度測って、その水の温度を出す計算式とかもあるんですよ。
福留:
そうなんですか?
森下さん:
はい、水温の計算式っていうのがあるんです。それもしっかり計算した上で、この温度で仕込めば目指している温度になるかなというのを調整しています。
福留:
水の温度が作っていく過程で上がったり下がったりすることも計算されるんですか?
森下さん:
はい。
福留:
そうですよね。でもさらに、パンって水だけじゃなくて塩の分量とか、もちろん粉の量も関わってくるじゃないですか?同じもの作るまでにどれくらいかかるんですかね?安定したものを作れるようになるまで。
森下さん:
お菓子づくりとかだと計量が大事じゃないですか?でもパンは逆に、小麦粉1つにしても新麦(しんばく)と古麦(こばく)という、古いのと新しいのでもその小麦粉の中に入っている水分の量がちょっと変わったりするんですよ。なので時期に合わせて水の量も調整したりします。
福留:
そうだ、吸湿性なんですよね、小麦って。だから香りも吸ってしまうし水分も吸収してしまうから、それこそ変わってしまうんですよね、水分量が。そんなことまで考え始めたらすごいですよね、毎回安定したものを作るって(笑)
森下さん:
はい(笑)さすがに見ただけだと小麦が水分吸ってるか吸ってないかというのはちょっとわからないのですが、年に何回か小麦の切り替わりのタイミングがあるんですよ。新しくなったなと思ったらもう仕込んでる段階でわかるんですよ。あ、今日ちょっと水が入り過ぎて生地がベタベタしてるから多分小麦変わったな、と。そう思ったらもう次の日から仕込みの水の量は少し減らして、という調整はしますね。
福留:
いや〜まずはその生地を作るところからこだわりも感じられるし、他にも季節柄のものを作る時って、例えばフレッシュなフルーツを使うこともあるじゃないですか?そういう新商品のアイデアは、森下さんもご提案されるんですか?
森下さん:
うちは新商品を考える専門の部署があるので、基本的にはそこで開発しているんですが、たまに自分もアイデアが浮かんだら実際に作ってみて、こういう商品作ったんですけどどうですか?といったプレゼンはしますね。
福留:
へ〜。いいな、それ食べるんですよね、毎回。いいなー(笑)では次に、Instagramでハード系のパンが結構メインで押されているのかなと感じたんですが、メゾンカイザーさんで食べられるハード系のパンの魅力があれば教えていただきたいです。例えばおススメの食べ方とか、もしあれば聞きたいです。
森下さん:
基本的に一番押してるのは『バゲットモンジュ』なんですが、メゾンカイザーのパンってたぶん他のパン屋さんよりも少し塩を多めに使ってるんですよね。
福留:
何故、塩を多めに使っているんですか?
森下さん:
というのも、料理に負けないパンを演出しているので、今まで食事の脇役だったようなところから、メインに負けないようなパンを作っているっていうのがカイザーの魅力なので、バゲットでしたら基本的になんでもそう思います。
福留:
メインに負けないパン…。なるほど…。
森下さん:
あと個人的には、あのエクメックという、蜂蜜とオリーブオイルのパン…
福留:
おっしゃってましたよね、あのトルコのパンの『エクメック』ですよね。
森下さん:
言ってましたっけ(笑)
福留:
実は、事前にスタッフさんからお伺いしました(笑)
森下さん:
それで、『エクメック』だと蜂蜜とオリーブオイル使っているので、例えば朝は卵につけてフレンチトーストにも出来るし、お昼ご飯だったらサラダとかを挟んでサンドイッチにも出来るし、夕ご飯だったらブルーチーズとかと合わせても美味しいんですよ。蜂蜜とチーズって合ったりするんじゃないですか。
福留:
合いますよね〜!
森下さん:
朝昼晩で色々食べ換えができるっていう部分で僕は『エクメック』をお勧めしていますね。
福留:
ちなみに全然関係ないんですけど、その『エクメック』とチーズを合わせたものと、お酒や例えばワインなど飲まれたりしますか?
森下さん:
僕お酒あんま飲めないんですよ…(笑)
福留:
あ、忘れてください(笑)
森下さん:
でも本当にチーズとワインとかやっぱり合うので。
福留:
そうですよね。蜂蜜が入ってますもんね、『エクメック』は。ブルーチーズとフレンチトーストすごいやってみたいなって思いました。
森下さん:
万能ですね『エクメック』は。
福留:
なるほど。他にお勧めの食べ方などはありますか?
森下さん:
カレーとかディップしてつけても美味しいですし、食パンの代わりのイメージとかで。食パンないときなんかは『エクメック』つけたりしますね。
福留:
そうなんですね。本当もう生地そのままでも美味しいですもんね。ありがとうございます。あとは、メゾンカイザーさんには菓子パンや惣菜パンなど、パンの種類がたくさんあると思うんですけど、ちなみにこちらの店舗ではどのジャンルのパンがよく売れるんですか?
森下さん:
まぁでも神楽坂も全店でもほとんど変わらないんですが、やっぱり『バゲットモンジュ』が売れていまして。
福留:
そうなんですね。たしかにメゾンカイザーさんのバゲットって大人気ですよね。
森下さん:
メゾンカイザーのハードパンの美味しい理由って、“低温長時間発酵”というのを使ってるんですね、製造方法として。
福留:
オーバーナイトですね。
森下さん:
はい、“オーバーナイト製法”で。その日中に仕上げるパンは『イースト菌』という、だいたい一つの酵母菌を使って短時間で仕上げるっていうのが基本的なスタンスなんですけど、メゾンカイザーは『ルヴァンリキッド』という、だいたい3000種類くらい酵母菌が入っている液体があるんですけど、それを毎日毎日注ぎ足して、それをパンの中に入れてるんですけど、そうすると3000種類くらい菌があるのでそれぞれの菌の特徴が出るんですよ。よく表現されるのがソロアーティストさんかオーケストラかみたいな、っていうような印象で。
福留:
あー、それは分かりやすいですね(笑)
森下さん:
そのイースト菌単体っていうのを別に否定するわけではないんですけど、その分メゾンカイザーのパンは深みだったり味わいだったり、あとは食感という部分で、その3000種類の酵母菌たちがいいところをどんどん出し合って仕上がっていくパンなので、ハードのパンっていうのを全体的に押してますね。
福留:
なるほど。天然酵母だからこその味なんですね。
森下さん:
その通りです。
福留:
それを知った上でもう一回ちょっと食べたいですね(笑)
森下さん:
よかったらあとで天然酵母持ってきますよ。
福留:
是非見たいです!こういう機会じゃないと見れないので嬉しいです!
森下さん:
ちょっと酸っぱいので、なかなか美味しいという表現はできないかもしれないですけど、ヨーグルトとかそんな感じの乳酸菌がメインで入っている液体なんです。
福留:
へー、そうなんですね。なんかこう果物とか穀物みたいなものは入ってないんですか?
森下さん:
入れてないですね。基本的に本当に小麦粉とお湯で毎日毎日注ぎ足して、使った分だけ注ぎ足してっていうのをずーっと繰り返してますね。
福留:
なんか以前別のお店でこういう取材させていただいたときに、土から酵母を取ってるお店があると聞いたんです。
森下さん:
土!?(笑)
福留:
そうなんですよね(笑)パンに使える土の酵母っていうのがあるみたいなんですけど、土から取ってるところもあって、酵母って色んなところにあるんだよっていうことを仰っていて。
森下さん:
そうですね、自然界に存在する菌を培養していくので、りんごでもできますし、レーズンでもぶどうでもなんでもできるんです。
福留:
その中でも乳酸菌を使ってるという事ですね。なるほど。ありがとうございます。見た目について気になったんですけど、例えば、店舗によってはクープ(切り込み)が縦だったり横だったりといった違いがある、というのをお伺いしたことがあったんですけど。
森下さん:
同じ商品ですか?
福留:
同じ商品です。特にないですかね?
森下さん:
それは基本的にないですね(笑)
福留:
噂なのかもしれないです(笑)見た目はだいたい全部統一されているんですかね?
森下さん:
基本的にはそうですね。ただ、シェフの好みとかで若干角度が違うなどといったことはあるかもしれませんね。基本的に本数とかは一緒になっています。
福留:
縦長のものは縦長だし、丸は丸で。
森下さん:
はい。
福留:
そうなんですね。すみませんこれ本当に個人的に気になったことだったので(笑)
森下さん:
いえいえ(笑)
福留:
たくさん質問させていただいたんですけれども、最後に森下さん個人として日頃大切にしていることってなんでしょう?
森下さん:
というのはやっぱり体調管理にはなってしまうんですけど(笑)
福留:
そうですよね(笑)
森下さん:
個人的にそれしかないから(笑)今こういうご時世っていうのもありますし、やっぱりパンってお客様が召し上がるものを提供している、飲食店ってだいたいそういうものじゃないですか。なので、自分が健康的じゃないと、汚らしい格好とか体調不良の人が作ったものってあんまり食べたくないじゃないですか。なので、自分の体調は常日頃大事にしていますね。
福留:
1番大事なことですね(笑)
森下さん:
そうですね(笑)すみません、テンプレートみたいで申し訳ないですけど(笑)
福留:
いえいえ、とんでもないです(笑)どれだけ一生懸命捏ねようとも、体調崩しながら捏ねられていても気になりますもんね(笑)たくさん質問しましたが、以上で終了となります。ありがとうございました。
森下さん:
ありがとうございます。取材後には、取材チームみんなでパンの試食を行わせていただきました。イートインもあるのでそちらで、紅茶と一緒に頂きました♪
特に、発酵バターで食べるバゲットモンジュは最高なのでみなさんも是非食べていただきたいです♪
皆様も是非、メゾンカイザーへ足を運んでみてください!
この記事を書いた人
福留 瞬 さん
トータルエンターテインメント集団「Candy Boy」のメンバー。 パンを食べること、パン屋さん巡りが大好き。最近は自分でパン作りも。 パンシェルジュ資格を取得し、Instagramでもパン情報を発信中。 ■Candy Boy 公式サイト https://candy-boy.jp/ ■福留 瞬 Instagram https://www.instagram.com/shun_fukudome_candyboy/?hl=ja
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