東京農大オープンカレッジ「パン食文化サロン”三麦三様”」〜前編・発酵とイギリスのパンについて〜


パン食文化を学べる講座に参加してきました!

7月10日(水)、東京農大世田谷代田キャンパスで開かれたオープンカレッジ【パン食文化サロン「三麦三様」ハード系パンの食べ比べ 第2回:パンとコンフィチュール】に第1回に続き参加。
3時間があっという間に過ぎるほど内容が充実していて毎月開催してほしいくらいです(笑)

天然酵母とは?酵母のお話。

まずは「麦踏み塾」塾長の青沼氏より発酵や酵母についてのお話。

現在、パン業界の中でも話題に上がっているのを見かける「天然酵母」という言葉。本来は自然界に存在する酵母を指すものであり、世界的に知名度の高いパン種としては以下の6種類があります。

・ホップ種
・パネトーネ種
・ルヴァン種
・酒種
・サンフランシスコサワー種

1900年代、パン生産技術の進歩により専用酵母が培養され、発酵安定性の高い酵母として広く使われたのが「サッカロ マイセス セレビシエ(イースト)」である。
ここ20年ほどはイーストでは風味など物足りなく感じる作り手が増え、「自家培養酵母」が人気。麹菌や乳酸菌等や微生物が混じりあって発酵して有機酸を作りだし、それを使うことにより独自の酸味や風味・食感のあるパンを作ることが可能となる。なので、「天然酵母」ではなく「自家製酵母」と店頭に表示するお店も見かけるようになりました。

「麦踏み塾」塾長の青沼氏

東麻布「モーニングトン・クレセント」オーナーシェフも登場

今回のゲスト講師、東麻布「モーニングトン・クレセント」(通称モンクレ)オーナーシェフ、ステイシー・ウォードさん。
英国伝統菓子の教室を開かれていて、不定期で月2回開催される「オープンベーカリー」も大人気。私も以前買いに行ったら午前中に完売し買えなかったので、この講座でステイシーさんに出会えて感激。人を魅了する笑顔と柔らかい物腰の素敵な女性です。

東麻布「モーニングトン・クレセント」オーナーシェフ ステイシー・ウォードさん

英国のパンの歴史のポイントをまとめ。

①17世紀から英国で言われている「Bread is The staff of Life パンは命の杖(命を支えてくれるもの)」。生きていくのに必要な存在である。

②キリスト教のミサでいただく聖体(パン)の実物は最中の皮のような薄いもので、割って人々に分け与え、物質的食べ物でありながら、霊的な糧でもある。

③中世イギリスでパンに使われていた全粒穀物は、
・Treat(rye)  ライ麦…古くから英や独で使われていた
・Cocket(barley)  大麦…小麦より歴史が古い
・Wastel(whole wheat)  全粒粉…全粒粉パンや白いパンが昔の人は食べたかった
・Simenel(white wheat)  白い小麦粉…セモリナと語源が一緒

イースターやクリスマスに食べる“シムネル”

写真のケーキは“シムネル”。特別な時(イースターやクリスマス)に食べるものでベースはフルーツケーキ(白い小麦、スパイス、ドライフルーツ)、上は丸いマジパン11個(ユダを除くキリストの弟子を表す)が乗っている。

④石のプレートで焼いていた
・クランペット…型に入れて焼くので厚みあり
・ピクレッツ…型無しで焼くので薄くやや大きめ
どちらも特徴は「穴』!「発酵」によりできるもので、この穴にバターやジャムがたっぷり吸い込まれたものを食べるそうです。

石のプレートで焼いていたパン

⑤1961年に開発された“Chorley Wood Bread Process”のパン。現在イギリスで80%のパンはこれ。
発酵なし=短時間&低コスト。イギリスのタンパク質の低い小麦が使われている。

⑥現在、「#Real Bread」というスローフードキャンペーンが打たれている(発酵なしだから胃腸に悪い、これはパンじゃない等の理由より)

もっと多くのことを教えていただいたのにボリュームオーバーにつき書ききれず残念(涙)。

現在、イギリスでは発酵なしのパンが主流となっている。

焼き立てのクランペットを試食!

ここからは焼き立てのクランペットと、同席したパンめぐ・めぐりスト 大谷りえ子さんが準備して下さった「ブーランジェリー・アダチ」のバゲットとパン・オ・ルヴァンも試食。
アダチさんのパンを食べられることに参加者の方からも「嬉しい!」の声が聞こえてきました。

クランペットは、もっちりして弾力があり、ほのかに甘い。もちもち食感好きな日本人には非常に好まれると感じました。冷めると硬くなるので焼き立てがオススメ。
※ステイシーさんに本場のクランペットの味を確認したら、このように少し甘いものやヴィネガー入れて軽い酸味のある生地も多いとのこと。酸味のある生地も気になります。

焼きたてのクランペットやマーマレード

添えられたマーマレード2種はステイシーさんが作られたもの。

「ダルメイン世界マーマレードアワード&フェスティバル」の日本大会が今年から愛媛で開催され、“鳴門オレンジ”で作ったマーマレードが銀賞を受賞したそうです!

ダルメインは、イギリス・湖水地方にある大邸宅でそこで開催されている品評会です。
マーマレードについても教えていただきました。

⦿マーマレードはピールが入っているのが特徴!
⦿英ではセビリアオレンジ(苦み、酸味強い)使用。
⦿60%以上の砂糖を入れないと英ではジャムと認められない。ペクチンのとろっと感。
⦿仏のコンフィチュールは砂糖少なめ、フルーツのフレッシュ感。

試食プレートの左上が“鳴門オレンジ”、苦みが強いけれどはっきりした味わい。下は“甘夏(熊本産使用)”、甘みが強く苦みがマイルドで複雑な味わい。

今回試食したクランペットのご紹介。

今回試食したクランペットは、前田食品「クランペットミックス」使用【国産小麦100%(ハナマンテン)、食品添加物不使用、イースト、粗糖、岩塩のみ】。国産小麦、特に埼玉産小麦を扱う老舗の製粉会社で、私の好きなパン屋さん達もこちらの小麦粉を使っていらっしゃいます。

この商品はまとめて焼いて冷凍保存もできるので忙しい朝にも便利。私は小2の甥っ子と夏休みに一緒に作ってみようと思います。楽天で購入可。

前田食品「クランペットミックス」


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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。

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