Over the Bread ~パンとクラフトビールのペアリング~


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「ビールとパン??」

最初に聞いたときはそんな反応だった私。

以前、パンイチ!日本酒とパンのイベントを企画したことはあったが、ビールは初めてだ。

なんとなく、ビールだとお腹が膨れるイメージがあって、炭水化物は合うのだろうか、、、と不安に思いつつも、吉祥寺の老舗ドイツパン店「Linde(リンデ)」さんに向かう。

*吉祥寺Lindeはサンロード商店街にある。 一つのパンを作るのに職人が2、3日かけて作る。本格的ドイツパンのお店。

 

ビールに合うものと考えて、まずはプレッツェルとグリッシーニのような細長いビアシュテンゲルをチョイス。

そのあと、ベーコンやチーズの入ったものを選んだが、そこでちょっと悩む。

ビールも酵母からだし、パンも酵母だ。あえて、ベーコンなどの具材にこだわらず、酵母の強いパンにしてみたらどうだろう。そしてビールの炭酸に負けない酸味のパンはどうだろう。

そう思って、キュンメルロゲンブロートというライ麦を70%とキャラウェイシードを入れたパンを選ぶ。(キュンメルとはドイツ語でキャラウェイシードのこと)

 

さて、会場に到着!

 

デザインも素敵なクラフトビール6本が並び、その説明を聞く。なるほど「チルドにすることで醸造所で飲むような作りたての味と香りが楽しめる」ビール。ビール好きの私としてはワクワク。

確かに試飲してみると、ビールによくある軽いアンモニア臭がない。とにかくフレッシュなのだ。「あ、想像してたのと違う」

 

そしてそれぞれのビールを飲むと、柑橘の香りだったり、ブランデーのようだったり、スパイスが効いていたりしてそれぞれが独特の感性をもつ。それぞれのクラフトビールメーカーが作った自信作だ。

 

さて私が用意した酸味の強いキュンメルロゲンブロートに合うビールはどれだろう。どしっとして、香りが強く、酵母の勢いを感じられるビール。

私が手にしたのは黄桜酒造がつくっている豊香のルビーエール。他のビールにはない濃いめの色合いだが、香りが際立つ。味も爽やかというよりは深い、でも飲みやすい。鼻から抜ける香りが素晴らしい。これとキュンメルロゲンブロートを一緒にいただくと、パンの深みが増す。酸味が心地いい。「美味しい!」

 

それぞれの個性がうまく合間って別のものを生み出す、この喜びは何者にも堪え難い。

 

ビールとの相性ってどうだろうと最初思っていた私の考えは杞憂に終わってしまった。

 

ただ、正直思ったのはこのビールだからこそ合うのかもしれない。普通に流通するビールではこのコラボレーションはあり得ただろうか。

 

また別のチルドビールで今度は別のパンを合わせるのが実は楽しみになっている私なのであった。


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この記事を書いた人

中田 よし子

中田 よし子 さん

吉祥寺で開催されるパンのイベント「パンイチ!」を主宰、中田ベーカリー店主。 東日本大震災を機に、サラリーマンからパン業界へ。代官山老舗ブーランジェリーなどで修行後、新しいパン屋の形としてフリーのパン屋を始める。 それと並行し、パンの新しい可能性を探そうと、オオトヨウコと2人でパンイチ!を2014からスタート。 家では8歳のやんちゃ双子の母。

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