『スモーブロ・ザ・マニュアル』日本語版出版記念 パンの上に広がるデンマーク、スモーブロの奥深い世界


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スモーブロの第一人者、アダム・オーマン氏が来日

世界幸福度ランキングで常に上位にランキングされる北欧の国、デンマーク。そのデンマークを代表する料理の一つが「スモーブロ(Smørrebrød)」です。

今回、「スモーブロの王」とも称される、スモーブロの第一人者として知られるアダム・オーマン氏の著書『スモーブロ・ザ・マニュアル』日本語版の出版を記念し、オーマン氏が来日。
デンマーク大使館でレセプションが開催されました。

デンマーク大使 ヤール・フリース=マスン氏

デンマーク大使やデンマーク関係者、ベーカリーやカフェ事業者、ミシュランシェフ、料理研究家、ライ麦生産者、製粉業者など、食文化関係者が集うなか、オーマン氏自らがスモーブロの歴史や哲学について語り、書籍に掲載された7種類のスモーブロが振る舞われました。

初めに、デンマーク大使であるヤール・フリース=マスン氏から、
・「食の季節感、職人の技術、良質な食材、細部に亘るこだわり」という点でデンマークが日本と共通していること

・日本は長年にわたり食を通じた外交『カリナリーディプロマシー(Culinary Diplomacy)』を行っていて、在外の日本大使館では日本の食を通じてリーダーシップの役割を果たしていること

・デンマークもスモーブロを通じて食の外交を行いたい
というお話がありました。

今回の『スモーブロ・ザ・マニュアル』の日本語版出版は、まさにその火付け役になると感じました。


スモーブロとは?

アダム・オーマン氏

スモーブロは、デンマークの伝統的なライ麦パン「ロブロ(Rugbrød)」を土台にした料理です。見た目だけを見れば「パンの上に具材をのせたオープンサンド」と表現されることが多いです。
しかしオーマン氏は、
「私はオープンサンドイッチという言葉を使いたくありません。寿司やピザと同じように、スモーブロはスモーブロという独立した料理だからです」と語ります。

「スモーブロの特徴は、単に具材を重ねることではありません。
コク、酸味、食感、フレッシュさ、香り。
それぞれは特別な素材ではなくても、緻密に組み合わせることでひとつの料理として完成します」
代表例として紹介されたのが「じゃがいもごはん」。
ロブロにバターを塗り、茹でたじゃがいも、ハーブのマヨネーズ、酸味を効かせた玉ねぎ、オニオンフライ、ハーブを重ねます。
一見素朴な組み合わせですが、口に入れると驚くほど複雑で立体的な味わいが広がります。


ロブロとともに歩んだデンマークの歴史

スモーブロの歴史は、ロブロの歴史とほぼ同じです。全粒ライ麦から作られるロブロは、何世紀にもわたってデンマーク人の食卓を支えてきました。

オーマン氏は、
「デンマークにおけるロブロは、日本におけるご飯のような存在」
と説明します。
王侯貴族から一般市民まで、誰もが食べる国民食。
そのロブロに、ラードを作るときに温度を上げるとカリカリとしたものが残る、そちらが上に載っているシンプルなものがスモーブロの原型でした。

その後、産業革命や保存技術の進歩により、燻製や塩漬け、マリネした具材を重ねるスモーブロとして洗練されていきました。
ところが第二次世界大戦後、工業化によって状況は一変します。
パンも具材も既製品が中心となり、本来の職人技が失われていきました。


スモーブロを再生させたオーマン氏

そんな状況に疑問を抱いたのがアダム・オーマン氏でした。
フランスやイタリア、コペンハーゲンで料理人として経験を積み、ガストロノミーの世界で働こうと考えていましたが、既製品で作られるスモーブロの現状(種類は多いけれど季節感もなく味は二の次、職人技が失われている)に憂慮し、自身のレストラン「Aamanns(オーマンス)」をオープン。
そこで取り組んだのがスモーブロの再構築です。
土台となるロブロは自家製。マリネ、発酵、燻製も自ら行い、季節の素材を使い、すべてを一から作る。
50種類以上あるのが当たり前だったメニュー数を12種類まで絞り込み、一品ごとの完成度を高めました。
オーマンスでは1つの具材を作るのに最低でも5つの仕込みが発生します。
12種類を作るには50~60の仕込みが必要になるため、これが最適なメニュー数なのだそう。

現在ではオーマンスは、伝統とモダンを融合させたスモーブロの名店として国内外から注目されています。

オーマン氏は、
「日本料理に触れると使用する素材は違っても、甘みと酸味のバランス、食感の重要性、発酵による奥行きを大切にした味付けなどの味の組み立て方に親近感を覚えます」と繰り返し話されました。

日本語版出版を支えた、くらもとさちこさん

写真右:くらもとさちこさん、写真左:オーマン氏

今回出版された『スモーブロ・ザ・マニュアル』日本語版について、オーマン氏は「くらもとさんなしでは完成しなかった」と、翻訳者のくらもとさちこさんに感謝を伝えています。
レシピを日本語に置き換えるだけではなく、デンマークの食文化や歴史、背景まで伝わるよう丁寧な補足が加えられています。

日本の読者にとって、この本は単なるレシピ集ではありません。スモーブロを入り口に、デンマークという国の文化や暮らしを知ることができる一冊になっています。

オーマンス流で味わう7種のスモーブロ

当日は、本に掲載されたレシピをもとに7種類のスモーブロが提供されました。
オーマンスでは揚げ焼きニシンから始まり、野菜、甲殻類やチキンなど軽いメニュー、豚や牛を使った重めのメニューへと進み、最後に甘いスモーブロで締めくくるのが伝統的なスタイル。
ナイフとフォークでいただくのが一般的ですが、今回のレセプションでは手で食べられるように通常サイズの約半分での提供でした。

揚げ焼きにしん(今回は鰯)

ロブロにソテーした玉ねぎ、揚げ焼きしたイワシ、オニオンフライ、ディルを重ねた一品。
香ばしい魚の旨みと玉ねぎの甘み、オニオンフライの軽快な食感が重なり、最初の一皿にふさわしい味わいでした。

グリーンアスパラガス

たまごサラダの上にグリーンアスパラガスを重ね、さらにマリネしたアスパラガスとハーブを添えています。
卵のまろやかさとアスパラガスの瑞々しさが心地よく、春の北欧を思わせる一品でした。

じゃがいもごはん

デンマークの定番スモーブロ。
じゃがいも、ハーブマヨネーズ、オニオンフライというシンプルな構成ながら、食感と香りの重なりが見事です。
スモーブロという料理の考え方がもっともよく伝わる一品でした。

チキンサラダ

しっとりとしたチキンサラダに青梗菜とベーコンを合わせたスモーブロ。
肉の旨みと野菜のフレッシュさがバランスよく、軽めの主菜。

豚バラ肉のブレゼ

やわらかな豚バラ肉にルバーブとチャービルクリームを添えた一品。
濃厚な旨みに爽やかな酸味が重なり、北欧らしい味の組み立てを感じました。

牛胸肉の塩糖マリネ

デンマークのクラシックスタイル。
塩と砂糖を加えたマリネ液に漬け、ほろりとほぐれるほどにじっくり茹でられた牛肉に、西洋わさびのクリームと生の西洋わさびを合わせて、濃厚な肉の味をさっぱりと食べさせる組合せ。
時間と手間をかけた職人技が際立つ一品でした。

チョコレートごはん

最後はデザートスモーブロ。
これだけは土台がロブロではなくバターと砂糖でカラメリゼしたブリオッシュ生地でした。
コンポートした季節の果物(今回はチェリー)、クリームシャンティ、味噌キャラメルソースを絞り、デンマークのビーントゥバーチョコレートブランド「フリスホルム」のチョコレートを載せてあります。
パンとチョコレートという親しみやすい組み合わせながら、非常に手の込んだ大人っぽい余韻が印象的でした。

質疑応答から見えたスモーブロの現在

参加者との質疑応答では、興味深いやり取りもありました。

「スモーブロには必ずロブロを使うのですか?」という質問には、
「10種類のうち9種類はロブロです。ただし海老など繊細な味の食材には小麦のパンを使うこともあります」と。

また、「日本でスモーブロが広まるならどうあるべきか」という質問には、
「日本では日本の食材、日本の季節を生かすことが大切です」と話されました。

さらに、「豚肉大国なのに魚介のスモーブロが多いように感じるのはなぜか」という質問には、
「デンマークにはレバーパテやベーコンなど豚肉を使った伝統的なスモーブロも数多くあります。ただこれまで野菜を使ってこなかったので、デンマークの季節感を表現するのにも適している野菜のスモーブロに注力しています」と説明。

パンの上に広がる一皿のガストロノミー。
スモーブロは、デンマークの歴史や文化、そして職人技が凝縮された料理であることを改めて実感する素晴らしい機会となりました。

代官山 蔦屋書店でのトークイベントのアーカイブ動画が購入できます

デンマーク大使館でのレセプションの翌日、代官山 蔦屋書店で1時間半に及ぶ出版記念トークイベントが開催されました。
今回の記事でご紹介した内容はかいつまんでおりますので、アーカイブ動画ではより詳しくスモーブロに使う素材一つ一つに丁寧に施される手仕事について、伝統的スモーブロをガストロノミーの領域まで高めるまでのお話、
また、オーマン氏がスモーブロを実演される様子もご覧いただけます。

会場にご参加いただけなかった方、オンライン配信を見逃してしまった方、6月末までの期間限定販売となっております。
ぜひこの機会に、特別なイベントをご視聴ください。

▼購入リンク
https://eventmanager-plus.jp/get/121efef8229391c5b65ee1e293dcd46e9a7e559ba725d8df2a6944563643a825

▼購入価格
8,800円

▼購入期間
6月1日(月)12:00~6月30日(火)18:00

また、5月に誠文堂新光社から出版された『スモーブロ・ザ・マニュアル』は、ガストロスモーブロのレシピを74点掲載。
さらにピクルスや自家製マヨネーズなどの小さなパーツのレシピも掲載されていて、スモーブロ以外にも役立ちそうなレシピが満載です。
ぜひこちらも手に取られてみてください。

https://www.seibundo-shinkosha.net/book/cooking/98420/


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この記事を書いた人

岩田聡子

岩田聡子 さん

パン屋さんめぐりは人と人を繋ぐ。転勤族&専業主婦の私でも気づけばパンを通じて友達の輪が!!旅行好きな主人と地方のパン屋もめぐってます。

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